風通しの良い家を建てるコツは?通気の基礎知識と上手に風を取り込むテクニック

    憧れのマイホームを建てるときに、風通しの良さについて強く意識している人は少ないと思います。

    風通しの良さは快適な生活において欠かせない重要な要素なので、設計段階から理想的な風の通り道を考えておくことが大切です。

    この記事では、風通しの良い家に共通する条件や生活のメリット、風通しを良くする設計テクニックなどについて解説します。

    風通しはとても重要な要素の一つ

    風でなびくカーテン

    多くの人は理想の家をイメージするときに、

    • こんな見た目の空間で
    • 日当たりはこれくらいで
    • 広くて開放的な空間で
    • 家具はこんなテイストで

    …など、目に見える範囲の理想を語る傾向があります。

    しかし、いざ完成した家に住んでみて多くの人が感じるのが、「風通しの良さって大切だな」というポイントなんです。

    自然風を受ける心地良さは、目には見えませんが身体で存分に感じられるもの。

    風通しが良ければいつでも心地よく快適に過ごせますし、逆に悪ければどこで何をしていても気になってしまいます。

    設計段階から風通しを意識しておくことで、後悔しない空間を作ることが可能になるのです。

    風通しを考えるときの三大要素

    「窓をたくさん設置すれば風は勝手に通ってくれる」と思っている人が多いですが、実際のところそんなに単純ではありません。

    風の通り道を作るには、「入口」と「出口」が必ず必要で、位置や方角によっても通りやすさは変わります。

    ここからは、風通しを考えるときに知っておきたい3つのポイントについて解説します。

    風の通り道は地域によって異なる

    どの方角から風が吹いてくるのかは、住んでいる地域によって異なるので一概には言えません。

    日本では南から北へと風が吹く地域が多いため、この方角にそれぞれ窓を設置しておくのが現状ベターな配置となります。

    ただし、季節や地域によっても風の抜け方は変わるので、あくまでも目安程度に覚えておくのが良いでしょう。

    大切なのは、”入り口と出口を意識して窓を設置”することだけです。

    ちなみに、どの地域でどんな方向に風が吹いているかは、気象庁のホームページで確認できます。風通しを緻密に計算する場合は、事前に土地の気象データをとっておくことも大切です。

    暖かい空気は上に逃げる

    小窓

    風通しについてもう一つ覚えておきたいのは、”暖かい空気は上に逃げる性質を持っている”ことです。

    暖かい空気は質量が軽いため、自然と上方向に向かって抜けていきます。

    冬場足元が冷えるのに、上のほうの空気は暖かい現象が起こるのはこれが原因。

    この性質を利用すれば、上下で立体的な空気の流れを作ることが可能になります。

    部屋単体で考えれば、「低い位置の窓から高い位置の窓へ通り道を作る」になりますし、家全体として考えると、「1階の窓から入れた空気を2階の天窓から逃す」となります。

    これに南北の通り道を加えることで、自然風の流れを自由自在に計算することができます。

    換気扇と空調設備を活用する

    上記2つの要素で自然な風の流れを作れれば良いですが、立地的に建物にほとんど風が入らない場合もあります。

    その場合は、換気扇や空調設備などで人工的な風の流れを作る必要があります。

    このときに注意したいのは、換気扇の位置と性能。


    位置が遠すぎれば空気の循環に差が生まれますし、広さに対して性能が低ければ換気不足になりやすくなります。

    どの部屋も換気と温度を均一にしたい人は、導入コストはかかりますが、思い切って全館空調を入れてしまうという手もあります。

    とはいえ自然風を全く取り入れられないのも困るので、設計段階でできる限りの工夫をしつつ、補助的に換気扇や空調設備を活用するのが良いでしょう。

    風通しの良い家に住むメリットとは?

    風通しの良さは暮らしの快適さに大きな影響を与えます。

    風通しが良いことで体感できるメリットについておさらいしておきましょう。

    自然風の心地良さを感じられる

    冒頭でも少し触れましたが、自然風を身体に受けつつ生活するのは心地良いものです。

    常に新鮮な空気を吸っている環境は健康にも良いですし、メンタルを改善するリフレッシュ効果も期待できます。

    加えて開放的なロケーションや日当たりの良さが加われば、気分は常に上々に!

    気持ちが充実していれば、家での生活が全て楽しく感じられます。

    夏場でも涼しく過ごせる

    風通しが良いと熱気の逃げ道ができるので、夏でも快適な温度で過ごすことができます。

    風がほとんど吹かない猛暑日などは締め切って冷房を付けたほうが快適ですが、日差しのない夜の時間帯や、夏シーズン終わりの涼しい時期などは、空気の入れ替えを行うだけで常に快適な温度で過ごせるでしょう。

    光熱費が節約しやすくなるので、家計に優しいというメリットもあります。

    カビの発生を抑制できる

    風通しの悪い空間はとにかくカビの発生率が高いのが特徴です。

    少しでも換気を怠ると、タンス・引き出し・窓際がカビだらけになることも珍しくありません。

    風通しの良い家であれば、毎日少しずつ換気をするだけで、簡単にカビの発生を抑制することができます。

    掃除の手間も少なくて済むので、暮らしやすさも向上します。

    室内洗濯干しでも生乾きになりにくい

    風通しの良さは室内干しにも良い効果を与えます。

    日当たりの良い窓際近くに干しておけば、嫌な生乾きの匂いはほとんどなくなるでしょう。

    濡れた状態で長時間放置しておくと危険なので、早めに干してから除湿・送風をセットで行うのがコツ。

    湿度をなくして早く乾かすのが基本ですが、逆に乾燥しやすい冬の時期は、加湿目的で室内干しをするのもおすすめです。

    風通しの良い家を作る設計テクニック

    通気の基本知識を理解したとしても、土地や周辺環境の条件によっては窓を付けられないケースもあります。

    ここからは、土地の条件が不利でも上手に風を呼び込むための設計テクニックを紹介します。

    地窓を設置してみる

    地窓のある家

    プライバシーなどの問題から通常の位置に窓を付けられない場合、「地窓」を活用して通気を確保するのがおすすめです。

    部屋の下部分から冷たい空気が上昇していくので、夏場でもひんやりした空気が流れ込みます。

    こういった細かい通り道を作っておくことで、家全体の空気の流れが良くなります。

    防犯面では注意が必要で、外から死角になりやすい位置に窓を作ってしまうと侵入されるリスクが高まってしまいます。人が通れない小さな窓にするか、二重ロック・防犯格子などを採用しておきましょう。

    天井近くの高窓でおしゃれに換気

    高窓がある家

    天井近くに「高窓(ハイサイドライト)」を設置するのも良いでしょう。

    地窓が空気の入り口だとしたら、高窓は空気の出口。

    高い位置の窓は採光がとりやすく、おしゃれな見た目はインテリア面でも良い効果をもたらします。

    日当たりが良すぎると家具が日焼けしてしまう可能性があるので、レイアウトには十分注意して設置してみてください。

    吹き抜け構造で立体的な通気を実現

    吹き抜けのある家

    1階から2階への通気を良くしたい場合は、「吹き抜け構造」を採用するのも一つの手です。

    壁や天井による空間の区切りがなくなるので、窓の数が少なくても下から上へスムーズに空気が抜けるようになります。

    天井近くにシーリングファンを付けたり、追加の空調設備で循環を促したりすることで、さらに通気力をアップさせることが可能。

    天窓との相性も良いのが特徴です。

    スケルトン階段で細かい通り道を

    スケルトン階段

    2階建ての設計でぜひ採用したいのが「スケルトン階段」です。

    スケルトン階段とは、文字通り骨組みだけで設計したシンプルな階段のこと。

    空気の通り道が無数にあるため、こちらも下から上へと空気の流れを作りやすいです。

    洗練されたモダンな印象を作れるので、シンプルなインテリアで空間を彩りたい人にもおすすめです。

    縦すべり窓で隙間風をキャッチ

    狭小住宅や密集地で周囲を住宅に囲まれている場合、窓を設置してもほとんど風を取り込めない可能性があります。

    そんなときに役に立つのが「縦すべり窓」です。

    縦すべり窓とは、縦軸に回って外側に開くタイプの窓のこと。

    これを家の横側壁面に設置することで、住宅と住宅の間を通る隙間風をキャッチし、自分の家に取り込むことが可能になります。

    引き戸で窓の代わりを作る

    引き戸

    単体の部屋で通気を考えた場合、空間の中に2つの窓があることが理想です。

    ただしこちらも間取りによっては1つしか設置できないケースがほとんどです。

    そんなときは、部屋の扉を引き戸にしてしまうというアイデアがあります。

    通常の開き戸では「開ける」「閉める」の二択しか使えませんが、引き戸は隙間の調節が可能なので、風の通りに応じて「少しだけ開ける」「60%くらい開ける」など細かく調整できます。

    扉も開閉可能な窓と考えることで、部屋の空気を通しやすくできるのです。

    風通しの良い家で快適な生活空間を作る

    今回は風通しの良い家の特徴やメリット、設計テクニックについて解説しました。

    土地の条件に左右されやすい風通しですが、悪条件でもアイデア次第で効率良く風を通すことは可能です。

    自然風が家の隅々まで行き届く家を設計して、快適な暮らしを楽しんでみてくださいね。