実施設計ってどんなもの?意味・特徴・ほかの言葉との違いについて解説

    家を建てるときに必要な具体的設計を煮詰めるのが「実施設計」という段階。

    家を建てるまでには設計だけでも複数の工程に分かれており、それぞれの段階で何を決めるのかを知っておくと、建築までの流れがスムーズに理解できるでしょう。

    この記事では、実施設計の意味や目的、ほかの設計段階との違いについてわかりやすく解説します。

    実施設計とは

    実施設計とは、基本設計で決めたおおまかな設計プランを詳細な図面や数値に落とし込んでいく段階のこと。

    描いた理想図を現実的な図面として書き起こしていく重要なフェーズです。

    実施設計を作る目的

    書類に何か記入している様子
    Photo by Scott Graham on Unsplash

    実施設計は、基本設計よりも詳しく数値を決定していきます。

    実施設計まで進むと、依頼者は建築費用の最終的な見積もりを手に入れることができます。

    そしてこのタイミングで、依頼者と建築業者の間で契約(工事請負契約)を結ぶことになります。

    また、実施設計が未完成だと、自治体に対して建築確認申請を行えないという問題もあります。

    自治体が建築確認申請を受け取り、それを確認した書類を出して初めて、工事を始められるようになるのです。そのため、実施設計は家を建てるうえで非常に重要な位置付けを占めています。

    実施設計の流れ

    まだマイホームを建てる検討段階の場合は、実施設計を作るのはタイミング的にかなり後になります。

    実施設計に至るまでの流れをみていきましょう。

    1. 依頼主からの打診がある
    2. 建築のための基本規格を立てる
    3. 基本的な構想を練り設計にとりかかる
    4. 基本設計を行う
    5. 基本設計を元に実施設計を作る
    6. 契約・工事の実施・施工管理
    7. 建築物の完成

    このように、設計というフェーズの最終段階にあるのが実施設計と考えて良いでしょう。

    実施設計にかかる期間とは

    実施設計にかかる期間は、家に求める機能や間取りの広さ、基本設計の進行具合によっても変わります。

    施工業者の選定すら行っていない場合は当然設計に進むまでの時間も増えますし、逆に要望がシンプルに伝わればトントン拍子で進むことも考えられます。

    それでも平均的な数字を提示するとすれば、実施設計にかかる期間はおおよそ2〜3ヵ月程度見ておいたほうが良いでしょう。

    ただし、これはあくまでも「実施設計を作るための時間」のみ。前段階で工程が長引けば、そのぶん工期は後ろにずれていくものと考えておきましょう。

    実施設計の費用

    見積書

    実施設計の費用を単体で求めることはなかなか難しいです。

    理由として見積もりに含む金額や各設計フェーズごとの金額は、それぞれのハウスメーカー・工務店によって決め方がバラバラだからです。

    ただし一つ覚えておきたいのは、実施設計の段階では何かしらの費用が発生する確率が高いということです。

    業者選定や打ち合わせの段階では無料で対応しているところが多いですが、この段階までくると費用が発生したり、キャンセル料が発生する可能性もあります。

    実施設計はだれが担当する?

    実施設計は建築士が担当することになります。

    これは依頼者側が個別で建築士を探さなければならないということではなく、依頼しているハウスメーカー・工務店が建築士を経由して作ってくれるので、依頼者側の時間がとられることはありません。

    実施設計と似ている言葉と意味の違い

    家づくりにおいては、さまざまな単語を目にすることになります。

    その中には、実施設計と似ている言葉もいくつかあります。ここからは、それぞれの言葉との違いについて解説していきます。

    基本設計との違い

    「基本設計」とは、依頼者の希望を元に実現可能な設計を行うことを指します。

    これによって依頼主と建築業者の間でイメージが共有できるようになります。

    対して実施設計は、基本設計を元として作られるもので、施工を行う会社が実際に工事に取り掛かれるようにした設計図のようなもの。

    このため、実施設計は常に基本設計の後に行うことになります。

    意匠設計との違い

    「意匠設計」とは、家の外側・内側などのデザインに関する設計をいいます。

    実際にはデザインだけを考えるわけではなく、

    • 建築基準法を満たした建造物か
    • 電気設備は配備されているか
    • 敷地や周囲の建物と調和しているか

    などを考慮し、全体のバランスを考えながらデザインを整えていくのが特徴です。

    構造設計との違い

    「構造設計」とは、建築物の構造面における強度や安全性を設計することを指します。

    基礎や骨格などの安全性を計算する項目であり、基本設計と実施設計どちらにも使用する設計分野となります。

    構造設計の作成においては、家自体の強度だけではなく、土地の強度も計算に入れなければなりません。

    設備設計との違い

    「設備設計」とは、家の中にある設備全般の設計になります。

    電気の配線・空調・下水道の配備といった生活インフラ設備の設計がメインであり、快適性に直結する目には見えにくい設計分野です。

    すでに説明した意匠設計・構造設計と合わせて行うことで、実施設計の骨組みが構成されるイメージです。

    詳細設計との違い

    「詳細設計」とは、実施設計とほぼ同じ意味で使われている言葉です。

    人によって細かい定義の違いはあるものの、基本的には「詳細設計=実施設計」と思ってしまって大丈夫です。

    双方が納得できる実施設計を完成させよう

    打ち合わせをしている様子

    今回は実施設計の特徴や意味、各種設計フェーズとの違いについて解説しました。

    実施設計で決めた仕様は建築前の最終確認も兼ねているので、妥協せずに一つずつ項目を細かくチェックしていきましょう。

    基本設計の段階で理想の生活イメージがズレていると、実施設計もイマイチ的を得ない完成度になってしまいます。

    依頼者と建築業者の双方が納得できるまで、何度も打ち合わせをして完成度を高めていくのが良い家づくりのコツです。